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メンヘラおばさんの日常

レールに乗れない一族

 数日前、レールから降りて起業しますとかいう記事がバズっているのを見ました。記事自体については思うところは特に何もなくて、起業する人なんて日本中にいくらでもいるし、本名と顔写真出して宣言するほどのことでもないだろうとは思いましたが、まあうまくいくといいですね。

 

 で、自分の場合はレールに乗っていたんだろうか、ということをしばらく考えていたのですけれども。

 途中までは確実に、レールに乗れていたと思います。小中高とそこそこの優等生ライフを貫き、親のマネーを食い尽くしてそこそこ有名な大学に入り、新卒で就職しましたものね。ただ、そのレールの行きつく先がおしまい町駅ホームで、そこで寝泊まりすることに耐えられずダイブイントゥレイルロードしたら複雑骨折して、普通に歩くことさえ難しくなったというのがこれまでの経歴です。就職氷河期世代あるあるです。

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 ところで私にはいとこが12人います(全員年上)。母方のいとこはみんな、ぴかぴかに磨き上げられたレールに乗り続けています。たとえばある人はバブル時代に女子大生としての生活を謳歌し、交通費をもらって就職活動してさくっと就職し、大手企業のサラリーマンと結婚して専業主婦になり、健康な子どもを育てています。

 

 一方、父方のいとこは微妙な感じです。特に男性陣がかなりレールを見失っています。1人はお父さん(私の父の姉の夫)の会社が倒産して、名前だけ役員になっていたため、莫大な借金を背負ってしまいました。ちなみにお父さんは女の人と逃げたみたいです(詳しいことはよく知らない)。仕事の少ない地方に住んでいるので、非正規の仕事を転々としながら借金を返し続けているようです。

 また、その弟は名古屋に出て働いていたそうですが、いつのまにかホストになっているらしいという話を聞きました。で、次にその人の話が出たときは借金取りに追われて行方不明になったと聞きました。で、その次にその人の話が出たときは、なんか知らんけどふらっと帰ってきて、やはり非正規で工場で働いていると聞きました。次に話を聞くときには、一体どうなっているのだろうと思います。

 

 さらにその上の世代の話も聞いてみると、やっぱり父方の男性陣はレールに見捨てられた感がしてなりません。

 父の兄は、高校卒業後「友達が起業するから俺も手伝ってくる」と言い残して行方不明になりました。で、何か月後かに一文無しになって帰ってきました。で、その後はタクシー運転手になって各地をふらふらしていました。最終的に今住んでいる地域に落ち着き結婚しましたが、なんか山師的なアレを感じてなりません。

 

 で、父なんですけど。私と一番血のつながりの濃い、顔も体質もそっくりな父親なんですけど。

 四大に行くには学力が足りなくて、当時共学になったばかりの短大に進学しました。周囲は女の子ばかりで、中高と男子校で育った父はコミュ障になり、引きこもりを発動しました。数少ない男友達が学校へ行こうと誘ってくれたおかげで、なんとか卒業できました。就職はどうもできなかったらしくて、タクシー運転手の兄が当時住んでいた奈良に行きました。毎日五重の塔を見ながらぼーっとしていたそうです。

 そうするとベビーブームというのが来たらしくて、教員が全国的に足りなくなったんですね。そこでしっかり者の姉が尻を叩いて父に教員試験を受けさせ、教員資格を持っていなかったので補助教員として働きながら夜学に通って資格をとり、小学校の先生になったというわけです。ここで初めてレールに乗れた、という感じです。時代の波とお姉さんのごり押しがなかったら、私は生まれていなかったかもしれません。

 

 この話を初めて聞いたときは、この父にしてこの娘あり、という言葉が頭をよぎりました。なんか、あれですかね。わりと要領が良くて周到な母方の血をちょっと混ぜ込んだぐらいでは、コミュ障引きこもりの血は薄められない、みたいな感じなんですかね……。

 父方の人間には、ガツガツと攻めていくタイプの人があまりいないんです。まれに攻めていった場合は必ず間違った砦を攻めています。みんな気が優しくていい人なんですけどね。でも、それじゃあ生き馬の目を抜くビジネスジャーナル誠ダイヤモンドオンライン日経プレジデント的な世界は生きていけないだろうな、と思うのです。

 私にも何か来ないかな、バブリーでラブリーなビッグウェーブが。スタートアップ的なブレイクスルーが。自らレールを降りた元学生の彼を見習って、いっちょ起業でもするかな……(しません)。